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仏ブルカ禁止法案巡り、イスラム教徒社会に亀裂

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【パリ=林路郎】フランスのサルコジ政権が閣議決定した、頭から足元までを覆うブルカやニカブなどのイスラム女性の衣装を公の場で広く禁じる法案は、6割以上の国民が支持し、大統領与党が国会で優勢なことから、成立が濃厚だ。

 これに対し、イスラム教徒社会は、一部が「法案は仏社会に潜むイスラム嫌いをあおる」と反発するなど、法案の是非を巡って亀裂を深めている。

 パリ北東ドランシー市。アラブ系住民が多いこの街で異変が起きた。商業施設駐車場の片隅にひっそりと立つ、体育館のようなモスク(イスラム教礼拝所)。シンボルの高い塔(ミナレット)も、モスク特有のスピーカーで礼拝を呼び掛ける声(アザーン)もない。

 「共和国的なモスク」の看板を掲げる同モスクのハセン・チャルグミ導師(36)は「ブルカ常時着用は宗教上の義務でない。世俗主義の国で禁止は当然」と法案を支持する。

 だが、「郷に入りては郷に従え」の論理に信者の一部は抵抗した。1月、同モスクを約80人の集団が襲い、導師殺害を予告。導師の解任を求める訴訟も起きた。導師は警察に警護され、同モスク内には監視カメラが並ぶ。事件は世俗社会への適応を「差別への屈服」と見る一部信者の反乱だった。

 パリ周辺でこうしたイスラム教徒同士の衝突が目立つ。反乱を支持し、同モスクに「縁切り」を通告されたアブデルハキム・セフリウィさん(51)は言う。

 「世俗主義は信仰の自由も保障しているはずだ。個人が何を着ようと国に介入する権限などない。イスラム弾圧が目的なんだ」

 57573.gif800万人近いフランスのイスラム教徒のうち、ブルカなどを着る女性は2000人足らず。その多くが白人女性の改宗者とも言われる。4月にはナントで、ニカブ姿で車を運転中の白人女性が「不安を与える姿で運転した」として警察に22ユーロの罰金を申し渡され、内務省が女性の家族調査に及んだ。

 TNSソフレス社の最新の世論調査では、64%が禁止法を支持。ブルカ問題の関連サイトには「共和国の習慣がいやなら出て行け」などの書き込みも目立つ。

 こうした中、穏健イスラム指導者のムハンマド・ムサウィ師は「禁止より、ブルカを着る女性たちの啓発を」と訴えてきた。増え続ける西欧のイスラム教徒たちは自らの宗教像を自問している。

読売新聞 から

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