お寺の本堂で芝居や朗読劇/岡山・本行寺/暗幕や空調完備
昼間はお経を唱える声が響く本堂が、夜には劇場に早変わりした——。岡山市北区蕃山町の「本行寺」の本堂は暗幕や空調設備が整えられ、年に数回、演劇やダンスのホールになる。10日夜、芝居や朗読の競演を約30人の観客が楽しんだ。
午後6時半。就実高校文芸部の女子生徒4人が俳句を朗読しながら入場し、この日のイベント「C・T・T岡山第2回上演会」が始まった。
両開きの扉を入った正面、普段は法要の参列者が並ぶ床が、出演者たちの舞台だ。その奥の一段高くなった部分にはイスが並べられ、観客席になっていた。ご本尊は実は観客の背後にあり、可動式のパネルで隠されている。
本行寺の本堂は一般の寺とはちょっと異なる、洋風の神殿のような建物だ。建てられたのは1962年。設計士が西洋建築に思い入れのある人で、欧州の劇場の要素を取り入れた珍しい本堂が出来上がった。「地域の人が集う場所にしたかったのでしょう」と、住職の秋山事遷(じ・せん)さん(38)は話す。
秋山さんは東京の大学院で仏教を学んでいた頃、俳優の榎本明さんが率いる「劇団東京乾電池」に所属して演劇にのめりこんだ。岡山に戻ると「寺を地域に開放して、演劇などの催しに使ってもらおう」と考え、2年前に障子窓に可動式の暗幕を、柱には照明器具を取り付ける金具を設置。空調も整備した。
「最近の寺は地域の人になじみが薄かったり、敷居が高かったりする。多くの人が集まり、地域の文化を活性化させる場にしたかった」と秋山さん。この日の催しでも、若者たちのパフォーマンスを穏やかな表情で見守った。
C・T・Tは「現代劇の訓練」の略で、アマチュアの劇団やアーティストが参加料を支払って参加し、観客の投票結果に応じて一部が払い戻される。この日は4団体が参加し、就実高文芸部の俳句パフォーマンス、「詩のボクシング」出場歴があるマドモアゼル愛子さんの詩とも歌ともつかない「妄想劇」などが観客の笑いを誘った。
C・T・Tは桃太郎大通りの柳川交差点から北へ200メートル。
柏崎歓 朝日新聞 から