1. 善通寺は「空海生誕の地」として八十八か所の中でも特別な場所です。
高野山金剛峯寺、京都の東寺と並ぶ、弘法大師三大霊場の一つで、かつてはここが「一番札所」だったそうです。境内や寺の周辺には、空海が幼少時代に勉強したり遊んだりしたという史跡がいくつもあり、宝物館には空海が中国から持ち帰ったという仏像とか、空海直筆と伝えられる経文などが安置されています。しかし、この時の私は疲れきっていて、五重塔にも上らず、宝物館もスルーしました。今思えば残念なことをしたと思います。お遍路は常に先へ先へと進むだけの「レース」ではありません。自戒を込めて言うのですが、お寺に着いたら、ぱっと参拝してぱっと先に行くのではなく、お寺の史跡や文化財もゆっくりと見て回った方が、実り豊かな旅になるはずです。
2. 四国八十八か所のお寺で、一番多いご本尊は「薬師如来」で、24か所あります。
もちろん、八十八か所すべては真言宗のお寺で、真言宗の最高位の仏様は「大日如来」です。でも、大日如来よりも薬師如来の方が、「病気を治してくれる」という分かりやすい御利益があるので、人気なのでしょうか。この辺りでは、74番甲山寺から77番道隆寺まで4か所連続でご本尊が薬師如来でした。本堂の前でご本尊真言を「おんころころ……」「おんころころ……」と連続して唱えているうちに、自然と覚えました。「ころころ」の語感が、かわいくて
3. 瀬戸大橋からの鉄道ルートでお遍路に行こうと思っている人は、79番天皇寺あたりから始めると便利です。
最寄り駅は「八十場」(やそば)という無人駅。天皇寺というだけあって、もともとは神社と一体となっていて、明治の政教分離政策でお寺と神社に分離したのだそうです。したがって、寺の山門は存在せず、鳥居をくぐって境内に入りました。
森重 達裕さん より 読売新聞 から