写経が現代でも続けられている理由については、「集中力をつけるため」、「字が上手になるため」、「心を落ち着かせるため」、などが考えられます。しかし、どのような理由であれ、写経は目に見える形として残るものです。落ち着いた気持ちで書いた字は、丁寧に見えます。落ち着かない気持ちでは、字が粗雑(そざつ)になります。この分かりやすさが写経の魅力の1つでしょう。
写経は本来、数少ない貴重な教典を学んだり、人々に伝えたりするために、お坊さんたちがお経を書き写していたことに由来します。先ほどの「遣唐使(けんとうし)」のように、大変な思いをして持ち帰った経典を、人々は心をこめて書き写しました。
写経は誰でもできるものです。「字が上手ではないから」とか、「仏教への信仰心は深くないから」という理由で遠慮される方もいますが、問題ありません。習字ではないので「上手な字」は必要ありませんし、写経は自分を見つめるものなので、信仰心とも無関係です。一文字、一文字をゆっくり丁寧に書いてみましょう。姿勢を正して、ただひたすらに文字を書き写していくことで、自然に筆にもなれてきますし、お経の意味にも興味がわいてくるかもしれません。