わが国の文化は、中国から伝わったために漢字中心の文化です。寺院で用いる仏教経典もインドの言葉(サンスクリット語)を漢訳したものです。
以前、本紙に「私の名前は知己(ともき)である」という文章を書いたことがあります。
現代社会はIT革命によって急速にパソコンが普及し、便利になったために私たちは文章を手書きすることが少なくなりました。その影響でしょうか。私自身も大学での講義中、板書しようとして漢字を思い出せなかったり、誤字を書いたりするという弊害となって出ています。皆さんもそうした経験はありませんか。
最近のテレビ番組に漢字の読み書きをテーマにしたものが人気ですが、出演者の正解率も低いようです。
さて、私の実名「知己」は、最近大方の人が「ともみ」と読みます。実は私の名前の一字「己」によく似た漢字がほかに2字あります。古くからこれら漢字を習う時の歌に「キ・コの声、オノレ・ツチノト下に付き、イ・スデニは中ば、シ・ミはみな付く」とあり、3字とも意味、読みが異なるのです。「己」の字は自己(じこ)・克己(かつき)などの言葉。「已」の字では已後(いご)、已下(いか)など。さらに「巳」の字は十二支の辰巳(たつみ)と使われます。
しかし最近、この文字を区別できない人が多くなってきました。漢字は誰が読んでも読み方が同じでなければならないのは当然のことですが、読めなければ、漢字にルビを付ければいいという風潮まで出てきています。
現代の日本人は急速に漢字を忘れつつあります。漢字文化、換言すれば、日本文化の消滅につながりはしないかと危惧(きぐ)しています。
三豊市・威徳院住職 坂田知應 より
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