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仏教は「苦しみの源泉を断つ」教え

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――松下さんの苦しみにうまく働きかけた仏教の教えや考え方って何だったのでしょう?

 自分の心の闇を調べようとして中に入っていくと、闇に引きずり込まれていく感覚があったんです。まさにニーチェが言う「深淵を覗こうとすると、深淵も覗き返しているんだ」みたいな話です。仏教は、つらいのであればそれを止めるために、自分をどんどん分解して、観察して、つらさの源泉を掘り当てていくところがあると思うんですよ。

 また、自分の抱えている苦しみが自分だけのものではないと知れたこともありがたかったですね。南直哉さんのように死の淵ギリギリから立ち上がって、生きる強さを取り戻したような人は、仏教以外のところで見たことがなかったんです。文学の作家、特に私が研究していたW・フォークナーなどは、生きるつらさをむしろエネルギーに変えて、創作に向かっていくようなところもあって。

 お坊さんの出家にはいろんな動機があると思いますが、私の場合は「このまま行けば生きていることだけはできそうだ」と思えたことがスタート地点でした。自分自身の生命をどうするかということのために仏教を必要としたんですね。

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