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死と進化

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人は死ぬ。生物だからだ。生物は進化してわれわれヒトが誕生した。

 進化のメカニズムはこうだ。ある生物の集団がある。そのメンバーには遺伝的なばらつきがある。親の世代は子どもをつくる。このとき子どもの数は親の世代より多いのがふつうである。そしてメンバーの遺伝的な性質によって生き残りに差があるとしよう。ある性質をもっているものは死にやすく、あるものは生き残りやすい。出生時に多かった子どもも、どんどん死んでいく。おとなになったときには、親の世代と同じくらいの数になる。そのとき、生き残りやすい性質をもつものが相対的に増え、逆に死にやすいものは減る。その結果、集団の遺伝子プールに変化が起こっている。この変化を進化と言うのである。

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親の世代 (●●●●●◯◯◯◯◯)……10人

子(●●●●●●●●●●●●●●●◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯)……30人

“●”の子も“◯”の子も死んでいくが、“◯”の子の方が死にやすい。それで大人になるまでに“●”は8人死んで、“◯”は12人死んだ。そうすると……

子が親世代になったとき(●●●●●●●◯◯◯)……10人  親の人数は変わりないが、
“●”と“◯”の比率が変化している! これが進化である。


 鉱物は進化しない。死なないからだ。進化するためには、死ななければならないのである。

 ヒトも生物の一種である。すべての子どもがおとなになるようにプログラムされていないのだ。ヒトの出産間隔は3年半。女性が赤ちゃんを産める期間が20年ほどだとすると、6人の子供が生まれたことになる。人口が一定だとすれば、おとなになる女の子がひとりいればよい。つまり、子どもの2/3は大人になる前に死んでいった。上の図で子どもの数が多すぎると感じた方が多いと思う。しかし、文明以前のヒトはこんなにもたくさんの子どもをつくり、その子たちが次から次へと死んでいったのだ。

 出生時には女の子100人に対し、男の子は106人生まれる。これは、男の子は女の子より死にやすく、おとなになるころには男と女の数が釣り合うようにプログラムされているからである。

 生まれてきた命は重い、というのは文化的な思想である。これは、個体の命の価値が高いという観念だが、その価値観を自然に持ち込むことはできない。死こそ進化の原動力であり、死ぬからこそ人間が誕生したのだ。

 死は個体にとっては消失だが、ヒトという生物種にとっては存続のための必然なのだ。

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