東京都立中央図書館(東京都港区)で、中国関連の蔵書を狙った切り取り事件が多発していることが7日、分かった。中央図書館は警視庁に被害届を提出。関係しそうな書籍類を閉架の書庫に移して警戒を強めている。
中央図書館の関係者によると、今年3月、職員が中国仏教の関連蔵書からページが切り取られているのを発見。その後も断続的に被害が見つかり、4月までに約30冊、被害額は18万8千円に上った。それ以降も被害は止まらず、6月末現在で被害は約50冊に及んだという。
切り取られているのは、中国仏教関連の蔵書がほとんどで、主に写真部分をカッターなどの刃物で切り取る手口。中央図書館では、もともと貸し出しをしていないため、何者かが館内の死角で切り取ったとみられる。
現在、利用者が中国仏教関係の書籍の閲覧を希望した場合は、職員の目が届くカウンターのそばで読むよう呼びかけているという。
中央図書館幹部は「特定分野の蔵書でこれだけの被害が短期間に集中したことは記憶にない。蔵書は都民の財産で、切り取りは犯罪行為。絶対にやめてほしい」としている。
都内の図書館では近年、利用者のマナーが悪化し、蔵書が切り抜かれるケースが増えている。だが、その対象は週刊誌や料理のレシピなどが主流だ。
利用者のマナーの悪化から平成20年に本の貸し出し履歴を一定期間、職員が調査できるシステムを都内で唯一導入した練馬区立図書館は「利用者による汚損や破損で区内全館で年間3千点の蔵書を廃棄しているが、雑誌がほとんど。中国仏教の専門書が狙われるケースは聞いたことがない」としている。