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ご利益スポット

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 陽秀院の山門をくぐってすぐ左手に、全身真っ白な紙で覆われた姿のお地蔵様が立っている。このお地蔵様は「紙張地蔵」といい、天保の頃から民間信仰が盛んになり現在に至っている。まず、水に濡らした白い紙を、自分の身体の悪い所とお地蔵様の同じ部分に張り付け、柄杓(ひしゃく)で水を汲んでお地蔵様に掛けてお願いすると、その病気を治してくれると伝えられている。

 今から300年以上前の寛永年間の頃、陽秀院の住職に檀家の相原という者が、「娘の腹に悪性の腫れ物ができ、日夜苦しんでいるから何とかしてほしい」と願い出た。そこで住職は、日頃から信心しているお地蔵様に熱心にお願いした。

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 すると、ある日の夜中にお地蔵様が住職の夢枕に立った。「白紙の如き白紙を自らの身にあて、苦しみをこれに移し、我が身にあずけ、邪心を捨て、真心をもって祈れば、我が代わりて、その苦を受けん」と告げたのである。住職からその話を聞かされた相原氏は、すぐに白紙をお地蔵様の体に張り、御名号と陀羅尼(だらに)を唱えて6日間お祈りを続けた。そのご利益があって、娘の病は完治したという。

 昭和20年3月12日に名古屋市は大空襲に見舞われ、陽秀院の地蔵堂も戦災で失われてしまったが、紙張地蔵は、その脇に立つお地蔵様が身代わりとなって、災禍を免れたといわれている。縁日である毎月28日には多くの参詣人で溢れている。白紙、2枚で10円也。

皆月斜 山口敏太郎事務所 より

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」

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