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寒天は粋があふれる和スイーツ

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夏の到来とともに恋しくなるのが涼菓。アイスクリーム、ゼリー、パフェといろいろあるが、ここ数年惹(ひ)きつけられているのが寒天だ。寒天を使った涼菓には、祭りとか古典芸能とか着物とかと共通の「粋」を感じるから。改めて考えてみると、これらの粋を感じさせるものは「和」モノばかり。もしや寒天も日本独自の……?

 調べてみると、大当たりだった。寒天の素といえる「ところてん」は仏教伝来とともに中国から伝わったのだが、それを寒天へと変化させたのは、日本人だ。

 『時は江戸時代の中頃、季節は真冬。京都にある旅館の主人・美濃屋太郎左衛門が、宿泊客が食べ残したところてんを屋外に出しておくと、翌朝そのところてんは自然凍結してカチカチに。それが数日経つと、今度は干物のように硬くなり、しかも「す」が入ったように変化している。不思議に思いながらこれを煮溶かして冷ましてみると、驚いたことにまたところてんになった』

 というのが、寒天の事始め。偶然の産物ではあるけれど、今の時代に置き換えたら特許取得も可能なほどの大発明だ。

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 寒天の原料となるのは海藻である「てんぐさ」「いぎす」「えご」「おご」などで、これらを煮溶かして乾燥させるだけだからローカロリー。さらに固まる時にたっぷりの水分を抱え込むため、満腹感も得やすい。それになんといっても、しなやかな弾力からふわっと広がる潮の香りが大きな魅力。口にするたび清々しい感覚でいっぱいになる――そんなところにも「和」モノならではの粋を感じている。

 寒天とよく合う素材といえば豆や黒みつだが、そういえば、ゼリーと豆、ゼリーと黒みつという組み合わせにはあまりお目にかからないような気がする。やはり、和ものどうしが好相性ということか。それなら、浴衣に風鈴、ほおずきなど、粋な日本の夏に囲まれながら寒天を食べれば、いつも以上においしく感じるかも!?

(ライター/棚田みよ子)より

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