ホーム 仏教のスペース Bouddhisme なにわ人模様:西成の三角公園で青空カラオケを開く僧侶

なにわ人模様:西成の三角公園で青空カラオケを開く僧侶

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桜、桜、弥生の空は--。4月中旬、日本一の日雇い労働者の街、大阪市西成区「あいりん地区」の通称・三角公園の一角に、陽気な歌声とアコーディオンの音色が響いた。伴奏者は作務衣(さむえ)姿の僧侶、杉本さん=奈良県明日香村・浄土宗蓮花寺徒弟。地面には参加者から、お酒の小瓶とたこ焼きの差し入れ。「流しのおっちゃんと思ってくれているのかな」と笑い、「お布施ですかね、今日は410円もらいました」。

 3月から毎月第2、4水曜日午後1時半~3時、労働者らを対象に青空カラオケを開く。元々農業試験場などに勤めた奈良県職員。退職を機に、病気がちだった中学生時代に興味を持ち、関連書物を読みあさった仏教をやり直そうと、一念発起。佛教大(京都市)通信教育課程に進んだ。

 4年の勉強などを経て資格を得たが、元々お寺を持たない身の上。「在家のお坊さんに何ができるだろうか」と悩んだ。その時、ふと思い浮かんだのがお葬式も満足にあげてもらえていないだろう、あいりん地区の路上生活者の存在だった。「あまりにも寂しい。自分にできることはないだろうか」

 初めての土地でつてもなく、NPO法人や社会福祉法人を訪ね歩いた。労働運動のデモで腕を磨いたアコーディオンを使い、地区の西成市民館で09年1月から住民向けのカラオケで伴奏を始めると、地区で活動する別の僧侶の誘いで、三角公園の夏と冬の祭りの「のど自慢」で伴奏することに。けさ姿で演奏すると「これが結構受けたんです」。手応えを感じ「外でいろんな人と話したい」と、青空カラオケを始めた。

 地区でキリスト教系の慈善団体は多いが、仏教関係者の姿は少ない。「布教活動もちょっぴりあるが、まずはここの人が楽しんでくれればそれでいいんです」。西成市民館では盆や彼岸の法要を開き、少しずつ参加者が増えてきていることに手応えを感じている。「お坊さんの存在意義」を模索している。

 参加者に配る「さんかく公園歌集(アコーディオン伴奏曲集)」は自費15万円かけて500冊作った。収録曲179曲は懐メロが中心だが、学生時代に作詞作曲した叙情歌も1曲入れた。リクエストを心待ちにしている。

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土本匡孝 さん より  

毎日新聞 から

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