ホーム 仏教のスペース Bouddhisme 中国で鳩摩羅什記念館の建設を支援、大洞龍明さん

中国で鳩摩羅什記念館の建設を支援、大洞龍明さん

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03-14.gif「鳩摩羅什(くまらじゅう)は経典を日本に伝えただけでなく、戒律を重んじる宗教哲学をもたらした。聖徳太子の日本建設も、鳩摩羅什が伝えた大乗仏教の自由の境地『空』の思想の影響を受けたと考えられます」

 岐阜市金竜町の浄土真宗・光明寺住職の大洞龍明さん(73)は五胡十六国時代にサンスクリット経典を漢字に訳した名僧・鳩摩羅什の遺徳をたたえるため、生誕地の新疆ウイグル自治区クチャに記念館を建設する計画の支援に乗り出した。16日から現地を訪れ、自治区の文物管理局と共同で顕彰事業を進める。

 鳩摩羅什は「大唐西域記」で有名な唐代の僧・玄奘(げんじょう)と並ぶ訳経三蔵。その漢訳経典は鳩摩羅什が旧訳、玄奘は新訳に大別される。中国・朝鮮仏教史を専攻した鎌田茂雄・東大名誉教授(故人)の定説では、344年にインド宰相の長男を父に、古代亀茲(きじ)国王の妹を母として亀茲王宮で生まれ、413年に長安で没したとされる。

 大洞さんは日中の仏教史を考察し、聖徳太子が没した622年、玄奘はまだ青年僧でインドへ留学しておらず、日本伝来の多くの経典が鳩摩羅什訳であることに着目。「鳩摩羅什の偉大な足跡があったからこそ、日本仏教の各宗派が成り立っている。中国や朝鮮に与えた影響も大きい」と考え、没後1600年にあたる2013年に記念館の完成を目指している。

 クチャはシルクロードの天山山脈南路のオアシス都市で、標高1100メートル。大洞さんは06年6月に初訪問した際、キジル石窟研究院で記念館建設を提案。その後、構想が具体化し、昨年10月にクチャを再訪し、張国領・同研究院副院長から正式に協力を求められた。

 企画書によると、場所は中国4大石窟の中で最も古いクチャの石窟寺院キジル千仏洞の近く。建築面積は約3000平方メートル、総事業費約650万元(約9000万円)で、中国側が100万元を準備し、残りは寄付を募るという。

 「近代のクチャは仏教が衰退し、イスラム教徒の街になっている。しかし、最初に仏教の井戸を掘った偉業が大事。私は資金を援助する形になるが、建物を古代王城風にして、鳩摩羅什の経典や資料なども展示できるよう希望を伝えたい」

 大洞さんは鳩摩羅什生誕地クチャに夢を膨らませている。

立松勝さん より

毎日新聞 から

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