東京・文京の「光源寺」の観音像の頭部を無断ですげ替えられ著作権を侵害されたとして、制作した仏師(故人)の遺族が同寺などに元に戻すよう求めた訴訟の控訴審判決で、知的財産高裁(飯村敏明裁判長)は25日、「著作権は侵害したが、元の頭に戻すことまでは必要ない」として、原状回復を命じた一審判決を変更、事実経過などを記した新聞広告の掲載を命じた。
問題となった観音像は江戸時代に作られたが戦争で焼失。同寺が原告の父の仏師に依頼し、1993年に新たな像が完成した。ただ、同寺は「参拝場所から見るとにらみ付けられているように見える」などとし、別の仏師に頭部のすげ替えを依頼。2006年までに半眼の新たな頭部に変更した。
飯村裁判長は判決理由で、「頭部をすげ替えたのは相応の事情は認められるが、仏師の意図に反する改変といえ著作者の同一性保持権を侵害する」と認定。
ただ、新たな頭部を作ったのが仏師の弟子でこの観音像の制作に関与したことや、取り外した頭部が今も保管され拝観も可能であることを挙げ「仏師の名誉回復には、すげ替えの経緯などの広告掲載で十分。元に戻すのは適当な措置とはいえない」として、原状回復などの請求は退けた。
一審・東京地裁は「頭部は保管されており、原状回復は可能」として、元に戻すよう命じており、同寺などが不服として控訴した。
日本経済新聞 から