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坊さんの本「素人目線」

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今治市玉川町八幡の第五十七番札所・栄福寺住職の白川密成さん(32)が、普段の生活や宗教に関する思いをつづった「ボクは坊さん。」を出版した。難解に思われがちな仏教の世界を分かりやすい言葉で描いた内容が評判を呼び、1月末の出版から3週間足らずで3度増刷するなど、宗教本としては異例の売れ行き。八十八か所霊場で最年少住職の白川さんは「若い自分だからこそできる仏教の伝え方を、これからも考えていきたい」と話している。(奥原慎平)

白川さんは、先代の祖父が亡くなった2001年、24歳で住職を継いだ。それまでは、高野山大学で仏門の修業はしたものの、ロックや美術が好きな「普通の若者」だった。突然、葬式を仕切らなければならなくなったとまどいなどを、同年から7年間、ウェブサイトで220回にわたって連載。「お坊さんと話したかったが、どう連絡をとればいいか分からなかった」などと予想以上の反響があり、出版を決意した。

本は四六判で285ページ、1600円(税抜き)。高野山で修行を積んだ学生時代から現在までの生活が描かれ、日常生活に葛藤(かっとう)を抱いた際に解決のヒントになる弘法大師や仏陀の言葉を紹介。住職になったのを機に改名した際、事情を知らない役所の女性に「名前は簡単に変えるものではない」とたしなめられたことや、僧侶仲間と草野球を楽しむ様子など、豊富なエピソードを盛り込み、柔らかなタッチで「お坊さんの日常」を描いている。

images-1-23.jpg仏教の世界を一般人の目線で描いた<ギャップ>が受けて発売直後から好調な売れ行きで、出版したミシマ社の担当者も「今までにない作風が時代に合っていたのですかね」と驚く。白川さんは「自分と寺は無関係だと思っている人にも、生や死について考えるヒントにしてほしい」と話す。

ほかにも、仏教の世界観をポップに描いたトートバッグやTシャツを作るなど、若者ならではの仏教の伝え方を提案している白川さんは、「仏教者としてはまだまだ未熟な自分だが、若いからこそ、仏教と読者の橋渡しをできることがあるはず」と意気込んでいる。

読売新聞 より

寺での生活を分かりやすく描いた「ボクは坊さん。」を手にする白川さん

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