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(被災地に生きる中)寺の天井絵市民が筆

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中越沖地震で築90年、土蔵造りの本堂が全壊した柏崎市内の福厳院。今月、被災後3年ぶりに再建を果たした新本堂の高い天井を見上げると、ユリやハスの花、雪割り草を描いた、86枚におよぶ絵画がずらりと並ぶ。どれも市民が震災復興や鎮魂の祈りを込めて描いたものだ。

 「市民の皆さんに天井絵を描いてもらったら、みんなの記憶に残る」。そう思いついたのは、栗林文英住職(56)の妻淳子さん(53)。お寺は檀家(だんか)とのつきあいが中心だが、被災をバネに新たな縁がつくれたらいいな、と思った。

 昨年6月から描き手を募ると、小学2年生から80代までの檀家(だん・か)25人、市民61人が応じた。絵のサイズは約80センチ四方と約60センチ四方。今年3月にはすべての絵がそろった。

 天井絵に込められた思いはさまざまだ。

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 ボタンを描いた檀家の丸田寿子さん(77)は「先祖代々の供養と震災復興の思いを込めた」。自宅は全壊。片づけ中に腰を骨折するなど大変な目に遭ったが、今は再建した自宅で三世代が同居し、穏やかに暮らしているという。

 長岡市の大学生金川真美子さん(21)は母親と1枚ずつ描いた。今月中旬、新本堂を訪れた金川さんは「お寺に飾るなんて面白いと思って描いた。またぜひ来てみたい」。

 栗林さんらが知り合いを通じて声を掛けた、北朝鮮による拉致被害者の蓮池祐木子さん(54)も紅梅を描いた。絵の裏側には夫薫さん(52)と連名で「拉致被害者全員の早期帰国」の願いを記した。

 「天井絵のおかげで、人との縁をすごく感じる。今後の交流が楽しみです」と淳子さん。目指すのは、広く地域に開かれたお寺だという。

 一方、中越沖地震で39店舗中8店舗が全壊し、4割が半壊以上の被害に遭ったえんま通り商店街。商店主らの3年間の協議が実を結び、店舗建て替えなど復興への動きがようやく具体化し始めた。

 更地だった旧カラオケ店跡地には老人福祉施設が今春着工し、来春開業する。半壊して使用不能だった呉服店「紺太」の店舗ビルは今秋に解体が始まり、来秋には店舗兼共同住宅に生まれ変わる。

 さらに地権者5軒が共同で店舗兼共同住宅への建て替え計画を進め、ほか3店舗も建て替えを考えている。新店舗はいずれも、えんま堂をシンボルに統一的な街並みを実現する「まちづくり指針」に沿った和風の建物になる。

 えんま通り復興協議会会長でもある中村康夫・紺太社長(50)は被災後、なかなか復興が進まなかった3年間を「前だけを見て走ってきた。辛抱強く協議し、よくここまでこられたと思う」。郊外型店舗に押される商店街の行方は厳しいが、「この街はふるさと。お年寄りから子どもまでいるコンパクトな街をつくり、ここで商売を続けていきたい」と力を込めた。

朝日新聞 から

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