仏教の経典を小石に書写した「一字一石経」の遺跡が嬬恋村千俣の万座温泉に眠っていたと、嬬恋郷土資料館が10日、発表した。江戸時代のものとみられる。3千点以上あり、人里から遠く離れた場所でこれだけ大量に見つかるのはきわめて珍しいという。
一字一石経が見つかったのは1887(明治20)年ごろ創業の旅館の跡地。建物を取り壊した時に出土し、2年間、保管していた。扁平(へん・ぺい)な石の表面にお経を一字ずつ墨で書いてある。
同資料館名誉館長の松島栄治さん(80)によると、近くに薬師堂があり、数十メートル先には修験者が使った「熊四郎洞窟(どう・くつ)」があることから、修験者が書写し、埋めて供養したのではないかという。
一字一石経の遺跡は県内に50カ所ほどあるが、大半は寺社に関係した場所や集落の要所などで、主に法華経の僧侶や信者が書き残したものだという。
松島さんは「温泉としての形態が整っていなかった時代に、万座が修験道の聖地であった可能性が高まった」と話している。
万座温泉に眠っていた一字一石経
一字一石経の一部。右から2列目には「福」「提」「説」「尊」の字が読み取れる=いずれも嬬恋村鎌原
朝日新聞 から