仏伝作家の深慮
それから、仏伝作者の意図を読み取るならば、マーヤー夫人が釈尊を産んで間もなく亡くなったという伝承には、仏母の清浄性を守るという効果*5が見込まれていたように、釈迦族の文字通りの滅亡を強調することで、釈迦族の末裔を標榜して仏教を政治利用しようとする勢力の出現を阻む狙いもあったのかも知れません。釈尊には、正等覚者となるか転輪聖王(世界を統治する偉大なる王者)になるかという選択肢があったという伝説も広く知られていましたから。
釈尊の開いた仏教は世界宗教として飛躍しましたが、それと入れ替わるように、釈尊を生んだ釈迦族は歴史の表舞台から消え去ってしまったのです。
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