鳩山由紀夫首相は20日、第16回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の晩さん会で演説した。首相が提唱する東アジア共同体の実現に改めて意欲を表明。中国、韓国、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの貿易自由化を推進する意向を示した。環境や災害など地球規模の問題で連携する必要性を強調。文化・芸術分野で域内の交流促進を強く呼びかけた。
東アジア共同体構想を巡って首相は「欧州と違い、多様な宗教や文化が存在するため実現不可能という意見もある」としたうえで「果たしてそうか」と反論。漢字の伝来などに触れながら「日本の文化はアジア各国にルーツを見いだすことができる」「東アジアは文化的融合体だ」などと持論を展開した。
その上で、相手の文化を互いに評価し、学びあう「文化の共同体」を提唱した。教育や文化・芸術の交流促進の重要性を強調。各国が毎年、持ち回りでアジアの芸術都市を定め、文化・芸術活動を催す計画を提案し「『東アジア芸術創造都市』が近いうちに誕生するよう、我が国は先頭に立って支援するつもりだ」と語った。
経済連携に関し「日本を開く」との表現で、アジア全域からの活発な対日投資と事業活動の拠点誘致を進める考えを力説。日本の国際競争力の向上もにらんだ税制の見直しや、遅れている港湾、空港のハブ機能の強化に取り組む意向を示した。
東アジア地域が世界の国内総生産(GDP)の2割を生み出す規模になったとして「地球環境の保全と持続的成長の両立の新たなモデルを世界に提示することが必要だ」と訴えた。具体策として、日中韓3カ国が中核となり、環境やエネルギー分野での技術革新を引き出す取り組みを強化する「東アジアイニシアチブを世界に発信すべきだ」と強調した。
アジア地域で頻発する台風や地震、津波などの自然災害への対策として、各国共同の衛星観測システムの構築を提言。情報を農産物の収量予測や自然環境の監視に生かす考えも示した。
日本経済新文 から