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立松さん最後のエッセー集刊行 死の直前まで連載

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J201005080306.jpg2月に亡くなった宇都宮市出身の作家立松和平さんの最後のエッセー集「遊行日記」が出版された。亡くなる直前まで雑誌に連載した48編を収録した。両親のことや友人との交流、仏教への帰依などがつづられ、生い立ちと希望や救いを求めた精神のありようがよく分かる。読みようによっては「遺書」と映る作品もあり、遺作にふさわしい内容といえそうだ。

 エッセーは「ナーム」誌に2006年1月から09年12月まで連載された。これらをまとめた「遊行日記」はタイトルの「遊行日記」のほか「百済、仏の道」「日本文化特使」など6部構成。全小説刊行中の勉誠出版が発行した。

 収録作品中、「トマト泥棒」「すぐそこの生老病死」「息子への最後の手紙」などは病気療養中の母親のことを書いた。父親のことは「父の戦い」「父、難民となる」「種をまく人」などにまとめた。満州(中国東北部)に渡り敗戦で難民となるが、命がけで脱出した父の生涯について、立松さんは小説にする計画があったようだ。「近いうちに一冊にまとめなければ」と生前、同出版の編集者に話していたという。

 このほか、「木喰の誓願」「仏教伝来」「神社がほしい」「知床毘沙門堂落慶」などが盛り込まれ、「人間、いかに生きるべきか」を求めて愚直に遊行を続けた作家の生涯がしのばれる。1890円。 

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