散骨は、遺骨を粉状にして、海などに撒(ま)く。NPO法人「葬送の自由をすすめる会」が「自然葬」として91年、相模湾沖に散骨して以来、広がっている。同会だけで2400人以上を自然葬にしたという。日本では戦後長く違法とみなされたが、現在、厚生労働省は「『墓地、埋葬等に関する法律』違反には当たらない」との見解だ。
日本消費者協会がモニターら約1100人から回答を得た07年のアンケートでは「故人が希望すれば行う」「自分はしたい」など自然葬・樹木葬の肯定意見は約8割を占める。
「風」(神奈川県横須賀市)は海への散骨を扱う有限会社だ。元カメラマンでヨットマンの北田亨さん・京子さん夫妻が98年に始め、現在は年間約150件の依頼が来る。「幼い日を過ごした中国大陸が見える日本海に」「航空隊仲間が待つ松山沖に」「富士山が見える駿河湾に」など、場所の要望は様々だ。
「子どもに負担をかけたくない」などの理由に加え、孤独死など身よりのない骨も約2割。粉にした遺骨を水に溶ける袋に入れ、音楽などを流しながら花びらなどとともに撒く。
樹木葬は、墓石に代えて樹木を植える形式といえる。岩手県の寺を皮切りに、花木で里山を守る自然保護の観点からも受け入れられ広がってきたという。
千葉県いすみ市の曹洞宗天徳寺(二神成尊住職)は04年から約300人を樹木葬で送った。住職が半径1メートルの範囲に穴を掘り、遺族がさらしに包んだ遺骨を埋め苗木を植える。人気はハナミズキやドウダンツツジだという。
生前は年会費が必要だが、死後の管理費はかからない。枯れれば寺が植え替え、「永代供養」する。二神住職は請われれば経も唱えるが、「鳥や虫の声、風の音に勝るお経はない」。
3年前に亡くなった妻の生前の希望で、サザンカの樹木葬で弔った千葉市の横田能治さん(69)は「子どもや孫と土をかけるうちに、悲しみが癒やされた」と言う。春にはタンポポやスミレが咲き乱れ、ウグイスの谷渡り鳴きが聞こえる。郷里の熊本県には代々の墓があるが、「私も妻の隣に入る」と話す。
「形見が残らないのもつらい」と、遺骨を手元に置く人も増えている。
「手元供養協会」の理事、野澤司さんは99年に東京都墨田区に「エターナルジャパン」を創業。遺骨を粉にして固め、顔写真などをレーザーで彫った名刺大のメモリアルプレートを作っている。年間200人が注文。遺骨を入れる焼き物やガラス瓶をつくる同業者もいる。「自宅でも旅先でも故人と一緒にいられる。故人と遺族の意思を最も尊重した方法です」と野澤さんは話す。
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