カフェで座禅、寺本堂でライブ、ネットで説法…。信者が減少し、寺離れに危機感を強める20、30代の若手僧侶らが、同世代に仏教の魅力を伝えようと、あの手この手の布教活動を展開している。(猪谷千香)
3日、東京・小石川のカフェを貸し切って始まったイベント「東京禅僧茶房」。座禅や写経などが体験できる7日までの企画だ。開催したのは曹洞宗総合研究センター(東京)。20、30代の僧侶12人が発案し、禅宗の一派である曹洞宗にとって初の試みだという。
写経に初めて挑戦した東京都内の女性(43)は「幼いころ、お寺でよく遊んだ思い出があり懐かしい。自分を省みることができると思い参加しました」。センターの水谷幸寛さん(27)は「今の人はお寺に来ることがほとんどありません。禅の素晴らしさを知り仏教に興味を持っていただければ。占いやスピリチュアルがブームですが、仏教も負けてはいません」と話す。
東京・神谷町の光明(こうみょう)寺の本堂で2月下旬に行われたFMくらしき(岡山県)の仏教番組「拝(はい)、ボーズ!!」の公開録音では読経や法話のほか、落語やロックのライブも披露された。参加した都内の会社員女性(31)は「お坊さんは話が上手で説得力があり、仏教って面白いと思った」と興味津々だった。
公開録音に協力したのは「インターネット寺院」をサイトで運営する若手僧侶のグループ「彼岸寺」。代表で、東京・西浅草の緑泉(りょくせん)寺副住職、青江覚峰(かくほう)さん(31)は「潜在的に仏教への興味を持っている人に入り口を示すのが役割」と話す。
富山県黒部市の善巧(ぜんぎょう)寺住職、雪山(ゆきやま)俊隆さん(35)もネットで布教を行っている。説法を携帯音楽プレーヤーなどにダウンロードして聴くことができる「ポッドキャスト説法」として配信。10万人以上が登録している。「ネットはお寺の文化を発信しやすい手段」と雪山さん。
文化庁によると、仏教信者は平成2年の9625万人をピークに、18年は8917万人まで減少。仏教の再生を訴える東京工業大学大学院の上田紀行准教授は「地域のつながりが薄れ、若い僧侶にはお寺が消えてしまうという危機感がある。若者の悩みが分かるのは同世代の若い僧侶。寺に来てもらえるよう敷居を低くして、働きかけていくのは重要」と話している。
http://sankei.jp.msn.com より
写真は 小石川の「nagaya cafe さと和」(猪谷千香撮影) から