姫路市出身の哲学者、和辻哲郎(1889〜1960)が亡くなってから今年で50年になる。姫路文学館(姫路市山野井町)では、谷崎潤一郎ら親交のあった作家や妻にあてた手紙、意見を細かく書き込んだ本などの遺品や写真などから、人柄や足跡をたどる特別展「和辻哲郎展 しめやかな激情」が23日始まった。(宮沢賢一)
和辻は現在の姫路市仁豊野に生まれ、東京帝国大学(現・東京大学)大学院を卒業後、同大の教授などを務めた。奈良の仏教寺院について記した「古寺巡礼」、土地の風土と文化のかかわりについて記した「風土」などの著作で知られる。文化史学、文学、倫理学の分野でも大きな功績を残し、1955年には文化勲章を受章した。
今回の展示は、著作だけではわからない和辻の人柄に迫ろうと企画した。約300点のうち約9割は、一般公開は初めてという。
谷崎潤一郎や夏目漱石、芥川龍之介ら文豪とも親交があり、谷崎から著書「細雪」を送ってもらったお礼のはがき=写真=では、「仕合(し・あ)はせで在ります」などとつづっている。妻の照(てる)さんへあてた手紙も多く、「わがつまよ、われは淋(さみ)し」などと婚約中に思いをささげた詩や2人で撮った写真もあり、愛妻家だったことがうかがえる。
ヘーゲル「法の哲学」の要点を本に直接書き込んだ「書き込み本」や愛用していた机や夫婦茶わんなども展示している。
玉田克宏学芸員は「和辻はもの静かな人だが、論争を繰り返すなど情熱的な部分もあった。そんな人柄を感じてもらえれば」と話している。
館内では、「古寺巡礼」で和辻が取り上げた古寺や仏像を写真家、入江泰吉さんが撮った写真展も同時開催。
朝日新聞 より