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坊さんは、葬式などあげなかった

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人の一生は名付けで完成する文学

 葬式や戒名を“要らない”とした著者の新書がヒット。この親本は05年刊。機を見て文庫にしたのはいい。でもこれって自己便乗本? いや、相乗効果型と言っておこう。

 国内外の宗教にまつわる一口知識風のコラムが計30篇。書名になったコラムの内容はこう。本来仏教と葬式は無関係だが、浄土教の流行や、江戸時代の人民管理法=寺請制度によって仏教による葬式が確立。その後、寺は明治の廃仏毀釈や戦後の農地解放で経済的基盤をなくし、収入を葬式に求める以外になくなり、“葬式仏教”と揶揄されるこの現代に至ったという訳だ。

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 この辺は心境複雑。田舎の寺からン十万円の出費を暗に強いる電話をもらったという都会の長男の話も聞くし、かといって“精神的荷物”を預けているのなら、その保管料を払うのも当然だろうし。

 「戒名は坊さんでなくてもつけられる」は、戒名不要論というよりも、人の一生とは名付けに始まり、名付けで完成する“文学”なのだなあと思わせる。どう生きたか、またどのように生きたいと願ったか。山田風太郎自作の戒名は「風々院風々風々居士」。川柳とか俳句の感覚だ。自作が無理なら、漢字のセンスに長けた友人を確保しておこう。

朝日新聞 から

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