ある80近いご婦人はこのように言われます。これは誰しもが望むところでしょう。フッと先週東京での山手線の人身事故が思い出されました。
それではどうしたら、その望みが適(かな)えられるでしょうか? そのヒントのひとつに、仏教の禅宗の根本理念である、「調身・調息・調心」があります。
できるだけ身を調える。そうすると息が入ってきて呼吸が楽にできる。そうすると不安が減り、楽になる。身心一如(しんじんいちにょ)の統一感のもとに、身を任せる。まだ残念ながら、死んだ経験がないのですが、なんとなくそう感じます。
▽口腔(こうくう)歯科的には
一般的には、歯をできるだけ残してくれる歯医者さんが名医といわれます。しかし、それも程度もんです。神経をとった古い歯根には、周囲がバイキンの巣になっていることがあります。それが「歯性病巣感染」といって、そのバイキンの巣が原因となって、心臓などの内臓や関節や筋肉などに病気が発症します。こういう歯は取り除いてあげると、驚くほど元気になります。あのご婦人の上顎(うわあご)の古い神経をとった歯を4本抜きました。上顎はこれで歯無しとなりました。
「先生! 先生のおっしゃったように、驚くべきことが起こりました。今まで経験したことのないくらい、鼻の通りが良くなって、気持ちが良いのです」
「良かったですね。どうです、息がよく通ったので、気持ちが落ち着くでしょう?」
「ハイ! とっても落ち着きます」
▽人間力の復活をめざすホロン医学
今、世の中はバラバラになっています。しかし、もともとは、マンダラのように巧みなバランスの中にいるはずです。ミクロからマクロまで、部分と全体が層をなして、成長・進化しているように見えます。
人間もまたしかりで、成長・進化するはずです。その前に生物的にはヒトであります。ヒトは哺乳(ほにゅう)類に所属しています。それではその所属を決めるもの、つまり哺乳類まで進化させてくれたもの、それは哺乳という行為だったのです。従って哺乳をおろそかにすると、ヒトをやめ、ひいては人間をやめないといけない。
こうしてみると、子育て(特に初期育児)がいかに大切かが分かります。そしてやがて大きくなるに従い、「噛(か)む」ことに変わります。
禅宗の調身・調息・調心もまさにホロンの考え方です。わたしはこのようなホロン的取り組みで、「人間の力」を復活させたいと考えます。
(やなもと・のぶお 大阪市福島区)より
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