国特別史跡・平城宮跡(奈良市、8世紀)で人の便を埋めて処理した穴とみられる遺構が見つかり、奈良文化財研究所が17日、発表した。内部の土壌を分析したところ、牛や豚の肉を食べると感染する寄生虫の卵を検出。当時の人々が肉食をしていたことを確認した。
奈良時代は仏教思想の影響で、肉食が禁忌だったとされるが、一方で肉食禁止令が度々出された記録があったり、イノシシ肉を献上した木簡も出土したりしていることから、実際には肉食が広まっていたと推察されていた。同研究所は「古代の食生活の実態を示す重要な物証だ」としている。
遺構があったのは都を警備する「衛府」などがあった官庁街。直径60センチ前後、深さ47~77センチの穴が6つあり、トイレットペーパーの代わりに使った細長い木片(籌木=ちゅうぎ)が約300点出土した。
原形をとどめた人の便も見つかった。平城宮跡で、トイレ関連の遺構を確認したのは初めて。
今回の発見と同様の寄生虫卵は古代の迎賓館、鴻臚館(こうろかん)跡(福岡市)などのトイレの遺構でも検出されているが「肉食をする外国人が使ったため」との説があった。同研究所は「今回は宮殿内の官庁街で検出しており、外国人の可能性は低い」とみている。
日本経済新聞 から