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弘法大師と六道輪廻

木曜日 2010年7月22日, によって ジン

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真言宗は即身成仏の教えを標榜する。だから人は死後みんな仏となるのだと漠然と考えている僧侶も多いようだ。六道に輪廻するなどという考えは受け付けないという。だが、そのような考え方をとるからと言って、みんながみんな死後仏になるなどと安易に言うことが出来るものなのだろうか。弘法大師は、著作の中にでも、六道や業輪などという言葉を多用されて衆生世界のあり方を述べられているのに、それを素直に認めようとしないのはいかがなものか。

宮本啓一國學院大学文学部教授は『仏教かくはじまりき パーリ仏典「大品」を読む』の中で、「インドで生まれた輪廻説は、仏教を通じてわが国でも一応は支持されて来ました。しかし、明治維新と併行して展開された廃仏毀釈運動や迷信打破運動の中で、輪廻説は急速に旗色を悪くして行きました。科学(サイエンス)は経験の観察から仮説的な法則を導き出す学問ですから、死んだらどうなるかという、経験を超えた領域の問題について、発言することはありません。・・・」それなのに科学的かどうかという観点から死生観を論ずるのは全くナンセンスなことである。そればかりか輪廻説を否定したところにこそ仏教の革新的な独創性があったなどと主張する仏教学者や僧侶が多いのには驚かされると宮本教授は述べておられる。

ところで、大正五年発行の『真言宗義章』という著作がある。著作者は、真言宗各派連合法務所編纂局とあり、当時の高僧方が明治の揺籃期を乗り切りさらに時代が退廃する中で危機感もあり、百六十七ページに真言宗の教えの骨子をまとめたものだ。読むと、この著作では六道輪廻が当然のこととして教えの根底にある。

早速、問題の即身成仏に関する章から見てみよう。「第八章即身成仏章」には、即身成仏には三重の次第があるという。まずはこの宇宙森羅万象すべてが仏の現れとしてみる立場から、私たち人間も含めたすべてのものは、そのまま仏であるとする即身成仏、これが一重。しかし普通、私たち凡夫は沢山の悩み苦しみを抱えて自らを仏とは思えないものなので、速疾に成仏できるとする密教の修法が必要となる。そこで煩悩に覆われて隠れている仏を開き見るために、凡夫は身に印を結び、口に真言を唱え、心に仏を想う三密の修行をもって仏と一体となる境界を一時的に体験する、これが二重の即身成仏。

そして、次に、その一時的な境界を絶えず積み重ねることで、常に四六時中仏と一つになり仏の働きを生きることができるとする。これが第三重の即身成仏である。そしてこの三重の即身成仏を成し遂げられた人は、すなわち弘法大師その人であるとしている。つまり即身成仏を本当にその生存中になされた人は弘法大師のようなたぐいまれな偉徳と学才を有する方のみということでなのであろう。

そして、「第十一章機根不同章」には、およそ真言行者の修行の段階や才能には正機と結縁の二種類があるとして、正機とはその生まれも良く才知に優れた上根上智の者をいい、出家在家を問わず三密双修の一生の間に成仏する機根であるという。これに対し、結縁とは生まれにも才知にも恵まれていない下根劣慧の者をいい、一密二密の修行による功徳によって、顕教の行者のように三劫を経ることはないけれども、二生三生を経て、つまり二回三回生まれ変わり、その間に機根が調い一生成仏がかなうとある。さらには私たちは神通力がないので、過去も未来も知らない、だから、過去世にどのような良い功徳を積んできたものかも知らないし、未来世のいつ成仏できるものかも分からないものだとしている。

さらに、「第二十一往生浄土章」では、この浄土は大日如来の浄土であり密厳国土と称するとしながらも、ここでも、上根上智の人は、三密の妙行によって一生の間に三密相応してこの身を転じることなく密厳浄土に往生する。けれども、下根劣慧の人は、一密二密の修行によって、如来の加持力と教益によって、地獄餓鬼畜生の三悪道の苦を逃れて、しばらく浄土に生じるか人間あるいは天上にあって、なお悟りを求める心を失うことなければ、二生三生の間には三密双修の時いたって、速やかに密厳浄土に往生するとある。つまりは一密二密の修行をしない者は三悪道に墜ちるかもしれない、それらの行によって、その功徳から人間ないし天上に生まれるという六道輪廻を仏教の死生観として受け入れてこの『真言宗義章』が書かれていることが分かるのである。


仏教はお釈迦様の時代を最高点として、以降徐々に劣化していると考える。何を持ってそう言えるかといえば、お釈迦様の悟りと同じ阿羅漢になる人の数からしてそのように考えるのである。仏教の経典が編纂され、律蔵論蔵が整えられ、学問的な発展、寺院や仏教徒の数がたとえ増えて世界宗教となったとしても、それだけで仏教が成し遂げられているとは言えない。どれだけ沢山の人たちがお釈迦様と同じ悟りに近づけるか、そこが問題なのであって、その観点からすると明らかに私たちは、おそらくは底辺の時代に暮らしているとの認識が必要なのではあるまいか。つまり大正時代の高僧方がまとめられた、江戸時代までの仏教の雰囲気を語り伝えるこの『真言宗義章』に書かれているものの方が今の仏教学者、僧侶が唱える考えよりも確かであると言えるのである。

それでは次に真言宗の祖師である弘法大師の自らの言葉を、筑摩書房刊『弘法大師空海全集』から、現代語訳をそのままに紹介してみよう。まず『三教指帰(さんごうしいき)』で仮名乞児という仏教行者の語りとして、「迷いの三界に一定の家はない。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天の六道の中で固定した所にいない。六道に輪廻する者はある時には天を国とし、またある時は地獄を家として住むこともある。あるいはあなたの妻子となり、またあなたの父母ともなる。・・・あなたと私は始めのない昔から、代わる代わる生まれかわり死にかわって転変し、常住でない。」と仏教の世界観を簡潔に述べている。ある先生は、この部分の解釈として、三界に一定の家なしとあり、一生の間に地獄もあり天上もありと単なる心の浮沈を表現したものだと断じられているけれども、それはあきらかに誤りである。この部分は何度も生まれ変わりして六道の中に定まる所なしという意味である。ここで弘法大師は自らの知識として持つ正当なる仏教の輪廻説を開陳したのだと言える。

また『続性霊集補闕鈔巻第八』中の「仏経を講演して四恩の徳を報ずる表白」には、「この世で死んで、後の世に生まれ変わり、生死輪廻の迷いの地獄からは、出ることが難しく、あるいは人となり、あるいは亡者となって、病苦の報いを受けやすい。まことに悲しいものは、われらこの世に迷うものたちである。まことに苦に満てるものは、この六道輪廻の世界を迷えるわれらである。」私たちはみな六道の輪廻の世界を生きている。それはとてつもなく苦しみにまとわれている。私たちはこの輪廻の果てしない長い生死に迷うているのだと言われているのである。

同中「有る人、先師の為に法事を修する願文」には、「人の生涯は百年に及ばないのに、万年にもわたる輪廻の悪業を行っている。賊のような悪業は、日々つみ重なって四つの魔の軍となって押しよせ、鼠が命綱を夜かみ切ってしまえば、命はむなしく閻羅王の罰の世界におちていくのである。」ここでは、この一生は短いものかもしれない、しかし私たちには過去の長い転生によって万年にもわたる業を作ってきていることを思えと言うのである。

『続性霊集補闕鈔巻第九』中の「諸の有縁の衆を勧めて秘密蔵の法を写し奉る応き文」には、「六道の迷いの世界の生きとし生けるものも、四生の流転の生きものも、みな父母であり、飛ぶ小虫、蠢く虫けら、何ひとつ仏性を具えないものはない。願わくは清澄な眼を見開いて三密の合致した仏の境地を照らし、煩悩の縛めを断ち切って、人々をして如来の五智の楼台に遊ばしめたい。」とある。四生とは、胎生、卵生、湿生、化生のことで、胎生は母胎から生まれ出るもの、卵生は鳥のように卵として生まれるもの、湿生とは蚊のように湿地より生ずるもの、化生とは天界または地獄、餓鬼のごとくに他の三生以外に自然に化生するものを言う。それらもみな何度も生まれ変わりする中で自分の父母であったかもしれない、だからこそ小虫であっても仏性がある。つまり一切の衆生に仏性があるというのは、六道輪廻がその根拠にあるということなのである。そのことに気づいて悟りに向かって私たちは生きるべきなのであると言われている。

いかがであろうか。誠に明快にその教えの根本に、この輪廻転生、六道、業、因縁という観念があってはじめて成立するということなのである。私たち凡夫の、いまの知識経験から理解できないからといって、お悟りになられたお釈迦様や、日本仏教の祖師方が言われていることを削ぎ落として、単に当時の人々に教えを語るために輪廻という世界観を枠組みとしてその中に自分独自の合理性を組み込んでいったのが仏教であるなどと断じてしまうのはいかがなものか。悟られた方の雄大な教えを悟ってもいない単なる知識だけの頭の枠に小さく閉じ込めることに過ぎないのであると言えまいか。そこからは教えの真にダイナミックな躍動、その力を受け取ることが出来ないことを肝に銘ずるべきなのである。

blog.goo.ne.jp/zen9you/e/871d977f0fcb049b84a87c7025a7e674 より

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